たかが自転車、されど自転車、県下一になった日
交通安全子ども自転車大会というのをご存知でしょうか。
小学生の子ども達に交通規則や安全走行に関する「学科試験」や、実際に模擬コースを走行する曲芸のような「実技試験」の2つで、優劣を競わせるというものです。
私が赴任したK小学校は、市内では1位か2位の成績を残していましたが、県大会になると10位前後で、他地区のレベルの高さに太刀打ちできない状態でした。
全く指導の経験のない私が監督に就任し、周囲は「また、今年も市レベルだろう。」との冷ややかな反応でした。
しかし、チームに集う子ども達の目はキラキラと輝き、「絶対に県大会でも優勝する!」と、根拠のない自信を披歴しながらも、心許ない私の指導にもついて来てくれかので、私も燃えない訳にはいきませんでした。
練習は、朝の学科試験勉強に始まり、昼休みと放課後の実技練習、これが2ヶ月続きます。
そして迎えた初めての私の采配による市の大会は優勝。
満を持して迎えた県大会は4位。
K小学校初の快挙でした。
しかし、子どもも私も決して満足はしていませんでした。
翌年、卒業によりメンバーが代わったものの、力を発揮し県大会2位。
栄冠はすぐそこ…の感があり、今までは、負けてもヘラヘラ笑っていた子ども達も悔し涙を流すようになってきました。
そして迎えた指導3年目。
最強の布陣を敷いて、県大会に臨みました。
その頃になると、K小も強豪校の一つとして扱われていたものの、前年優勝のF小には敵わないだろうとの大方の予想でした。
しかし、蓋を開けてみると、我がK小の子ども達は、学科では全員満点、実技でも全員ノーミスという県大会史上初の大快挙をやってのけ、F小に大差をつけてぶっちぎりの優勝を果たしました。
成績発表のその瞬間、歓喜や安堵だけではない、全身の力が抜ける恍惚感に包まれました。
自分の結婚や、長男・長女の誕生も、もちろん幸福な瞬間ではありましたが、人生で一番最高の幸福な瞬間は、やはり、子ども自転車県大会で初優勝した時でした。