父のバイクに乗って潮干狩りに行った時のはなし
父のバイクに乗って潮干狩りに行きました。
私は当時身体が弱く学校を休みがちで、その日たまたまお休みだった父と2人きりでした。
「たまには太陽に当たらないと駄目だよ。」 そんな事言われた事もないのに、その日はいつになく優しく穏やかな父。
きっと私が学校で受けてるイジメもわかっていたのでしょう。
姉も母も乗った事のないバイクにまたがり、疾風を受け、太陽の日差しが暖かくテンションはマックス! 楽しい一日が始まりそうな予感。
20分ほどで干潟に到着し、 2人で思い切り取り始めました。
ぬかるみが生暖かいのに比べ風が少し冷んやりしていて、またその上の太陽の光りが暖かくて まるで、アイスクリームクッキーの中にいるような凄く幸せな気持ちになりました (笑)。
ひたすら取って掘ってを繰り返していたら、バケツの中にたくさんの貝があり、その中に小さな蟹がモゾモゾと1匹 外に出たがっていました。
「学校行きたくないなら、行かなくていいよ。転校してもどうでもいい。君の好きなようにした方がいい。ただママもパパもサポートは全力でするから、安心しなさい。」涙があふれました。
と同時に申し訳なく思いました。
普段忙しい父が潮干狩りに連れ出してくれた意味がわかりました。
私はいつも守られていたんだ。
家族に、空に、風に、海に 全てのものに。
ただ貝の中に埋もれた小さな蟹のような物なんだ。
ようやくわかった。
「うん。ありがとう。」 バケツの中の小さな蟹を摘んで私は海に放した。