楽しいかくれんぼが一転して生死に関わる大事件に

かくれんぼ

ある夏の暑い日、当時小学校2年生の私は、兄弟でかくれんぼをしていました。

布団の中や、庭の木の陰などなんとか見つからない場所を探してかくれんぼに没頭していました。

遊びが長時間にわたり、隠れる場所もだんだんとなくなっていきました。

長男の私は弟や妹にどうしても負けたくない気持ちが強く、絶対に見つからない隠れ場所を探していました。

遊びを始めてから、時間がかなり経過していたため、次で最後ということになりました。

絶対に見つからずに終えたいと考えた私が目をつけたのは、母親の車の中でした。

田舎だったこともあり、自宅の車は常に鍵が差しっぱなしとなっており、中には容易に入ることができました。

初めは助手席や後部座席の足元に隠れていましたが、鬼による捜索が始まる中で外から見えてしまうことを恐れた私は、トランクの中に移動しました。

外から見えない様に、後部座席のシートを前に倒して、トランク部分にそっと移動しました。

シートを戻すことで完全に外からは確認できなくなると考え、シートを手で引き込んだ時、「ガチャン」という音とともに、シートが固定され、トランク部分からは開けられなくなってしまいました。

初めは焦りましたが、ここで騒いだり動いたりしたら見つかってしまうと考えた私は、しばらく動かないことにしました。

しかし、季節は夏、車の中の温度は高く、密閉されたトランクの中は呼吸をするのも苦しくなってきました。

我慢の限界に達した私は「助けてー」と叫びながら身を捩りました。

それが逆効果となり、盗難防止のロックが作動し、車は施錠されてしまいました。

鍵がかかっていることを、トランクの中の私は知る由もなく、助けを求めて叫び続けました。

しかし、施錠された車の中に私がいるとは思いもしない、兄妹は気づくはずもなく、トランクの中の私は意識が遠のいていきました。

叫び声も上げられなり、意識も朦朧としてきたその時、「バリーン」という音とともに、母親の顔が目の前に現れました。

私の叫び声は、微かではありましたが、家の中にいた母親に届き、施錠されていたため、窓ガラスを割り、私を助け出してくれました。

自分自身の安易な考えから、楽しいかくれんぼが一転し、命の危機に晒された体験でした。

それ以来、私は兄妹や友達と遊ぶ際にも、楽しさと同時に安全性も考慮して遊びを行う様になりました。

大人になった今でも、物事の裏側に潜む危険には敏感です。