絶体絶命を救ってくれた、ぼんやり宮沢君
中学一年生だった頃のある授業中、突然腹痛に襲われました。
それはもう冷や汗が出るくらい。
ただ、多感な思春期の真っ最中に、女子の私が「先生トイレに行きたいです」と手を挙げる勇気など持ち合わせておらず、時計の針をただただ睨みつけ、時間が一刻でも早く過ぎることを願っていました。
そんな時に限って、授業は先生の説明に終始し、全く持って騒がしいなどとは程遠い、皆が寝てしまいそうなほどのけだるい空気感の中、叫びそうな私の心とは裏腹の時間の経たなさでした。
私の下腹部も限界近し。
トイレに行けないばっかりに汚名が付くことになるかも、もう堪えきれないと思った時、ブーっと小さなおならが出てしまいました。
私は不自然に机を動かして、ごまかそうと必死になりました。
忘れもしない隣の席の宮沢君は、ふと動きを止めましたが、何事もなかったかのように授業を聞いていました。
そこへまたブーっという小さなおなら。
私は顔面蒼白になりながらもまた机をずらしごまかそうとしました。
その宮沢君、頭が良くて、ぼんやりしている良い子なんです。
また一瞬彼の手が止まりましたが、首をかしげてまた勉強に集中してくれました。
チャイムの音と同時に走り出した私。
事なきを得ました。
宮沢君のあのぼんやり具合。
今はどこで何をしているのかも分かりませんが、宮沢君の幸せは切に願い続けています。