大学受験の会場ではじけ飛ぶ、制服のボタン
これを人生最大のピンチといっていいのか迷いますが、あの瞬間は確かに私にとってこの上なくピンチでした。
大学受験の当日のことです。
当時の私は高校入学の時よりも太ったために、制服のブレザーのボタンが辛うじて止められるという状態でした。
普段はブレザーの下にセーターを着こんでいたのでボタンを開けていてもそれほど違和感はなく、式典などのどうしても着崩しができない時のみ頑張ってボタンを留めていました。
受験当日も、今日ばかりはボタンを開けられないと思い、しっかりと制服を着て過ごしていました。
しかし昼食を食べたのがいけなかったのでしょうか、午後の面接前の待ち時間に、限界だったボタンがブチリと音を立ててはじけ飛んでしまったのです。
受験に不必要な裁縫道具を持っているわけもなく、周囲の学生達も人の心配より自分を優先させて見ぬふりです。
頭の中では、どうしようどうしようの単語だけが回っていました。
冷静になってみればだれか先生を呼び何らかの対処をしてもらえばよかったのでしょうが、当時まだ高校生だった私には、この失敗を隠さなければという思いのほうが強くありました。
カバンをひっくり返し、何かないかと探して見つけたのは、なぜか入れっぱなしになっていたセロハンテープ。
もうこれしかないと思った私は、そのセロハンテープでボタンを張り付け、できる限りお腹を引っ込めて面接を受けました。
面接のことはほとんど記憶にありません。
おそらく突然の出来事にパニックになり、準備していた内容も真っ白になったまま、なんとか受け答えをしたのだと思います。
幸いにも合格をもらえたので、この出来事は笑い話と教訓として子供たちに話すことができています。