突然の憂鬱な雨の中、心を晴れにしてくれたおばあさん
私が大学卒業後、新卒で企業に就職するも上手くいかず、1ヶ月もしない間に退職しました。
私が暗い気持ちの中、世間は夏休みで楽しそうな学生とあくせく働くサラリーマンで街が活気溢れていました。
就職に失敗し憂鬱な私は、街のみんなのように何か楽しいことをしたいと思い、アルバイトが早く終わったので、大好きな母と帰ってお茶をするためにデパートでケーキを買おうと思い、軽い足取りでデパートに向かいケーキを選びました。
早く帰って母と一緒にこのケーキ食べたいなぁ。
甘いものが好きな母は喜ぶだろうなぁと思いながらデパートを出ました。
すると、さっきまで晴れていた空に黒い雲がかかり、雨が降り出していました。
街の人たちは傘をさしている中、天気予報を確認しなかった私は傘もなく雨に打たれていました。
いつも失敗する。
上手くいかない。
と落ち込みながら大事なケーキだけを守り、信号が青になるのをじっと待っていました。
一人だけ雨に打たれている孤独な状態は、学校の教室でポツンと一人で浮いているような気持ちと同じでした。
そんな信号待ちの中、急に雨が止んだのです。
上を見ると、誰かの傘がさされていました。
隣を見ると、優しく微笑んでいる綺麗な白髪のおばあさんでした。
「私もこっちの方向だから一緒に行こうね。」と一言だけ言って一緒に横断歩道を渡ってくれました。
申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちでいっぱいでした。
失敗続きの不幸にみえる私は街中の誰よりも幸せな私でした。