中学三年生、部活の引退式でのパート仲間の言葉

友人との吹奏楽

元々体を動かすことが大嫌いで、スポーツは何一つ長続きしなかった私は、幼い頃からサッカー、水泳、バレーボール、硬式テニスとあれこれ手当り次第に習い始め他にも関わらず、どれも3ヶ月もしないうちにリタイアすることがほとんどでした。

そんな私が中学一年生の時、部活見学の際に友達Aが吹奏楽部に入ると言ったのです。

絵を描くのが好きだったものの、中学の美術部のゆるさにがっかりした私は、それを聞いてあっさりと吹奏楽部に入部することに決めました。

ところがいざ入ってみると、吹奏楽部は文化部ではなく実質運動部とそう変わりなく、一年生の間は毎日走り込みに筋トレ等の繰り返しで、やっと楽器が触れたと思ったらまともに音もならない。

私にはそれがとても苦に感じられ、何度か部活もサボったりもしていたものの、一年生の終わりごろから音が鳴るようになって、曲が吹けるようになっていくと、いつの間にかその面白さから吹奏楽にのめり込んでいきました。

とはいえ、辛い練習に耐えてこられたのはひとえに、同じパート仲間のNのおかげ。

三年間の間、一度もサボらず音楽と向き合うNに尊敬と憧憬の念、また同時に劣等感も抱いていた私ですが、それでも同じ楽器のパートの仲間として私を尊重してくれているNが大好きでした。

私達の代の引退式の日、三年生一人一人がスピーチをしていく中で、Nのスピーチが始まります。

Nは序盤はすらすらと思い思いの言葉を紡いでいましたが、私の方を見ると途端に目がうるみ始めました。

「〇〇(私)がいたからこそ、辛い時も辞めずに乗り越えてこれた」 それはそのまま私がNに言いたかったこと。

ずっと一方的だと思っていた気持ちを、まさかNの方からも向けられていたとは思っておらず、それを聞いた時は同性同士であり、初恋とはまた違った感情であるにも関わらず、初めて好きな人と心が通じあったような幸福感が私の胸をいっぱいにしました。

今でもNの存在だけは、私の人生の中でも未だに異質なものとなっています。