幼い頃、スーパーの階段を上ったら、踊り場でカップルがキスしていた
幼稚園児くらいの頃、実家に帰省した時の話です。
実家周辺のスーパーに家族で寄った際に、僕は家族がトイレに行っている間、暇なので階段を上り始めました。
初めて行ったスーパーなので、探検したくなったのです。
それで階段を上り踊り場に差し掛かると、そこで高校生くらいのカップルがベンチに座って向かい合い、顔を近づけていました。
スーパーによくある、木製のぶ厚い板に足がついたような、背もたれのない単純な構造のベンチです。
電球の明かりが弱く薄暗くてよく分かりませんでしたが、恐らく腰をひねって見つめ合い、キスをしようとしていたのだと思います。
キスした直後なのか、直前なのかは分かりませんが、女の子の方が僕に気付き、ぎくりと身を固くしました。
それに気が付いて、男の子の方もサッと後ろを振り返り、女の子の視線の先にいる……つまり、僕の方を見ました。
当時まだ幼く、恋愛のれの字も分からない僕でしたが、なんだか気まずい状況だということだけは何となく分かりました。
「あー、上はこんなふうになってるんだぁ」 と、棒読みに近い声音で僕は踊り場をキョロキョロと見渡し、そそくさと階段を下りました。
カップルの二人からしても、どう考えても気まずさを誤魔化そうとしているのは分かり切っていたと思いますが、それが当時の僕にできる精一杯でした。
そのあとのことは分かりません。
二人は追ってこなかったので。
これが僕が経験した、僕の身に起こったドラマ・漫画のような経験です。