成人の子供の迷子を心配する、蛍光オレンジジャンパーの父
父は私の友人達が来ると張り切って、いつでも色々な場所へ連れて行ってくれました。
ある時は登山やお祭り、またある時は船で観光などです。
この日も私の学生時代の友人が3人、遊びに来ました。
父は「ここは全国的に潮干狩りの名所だから、潮干狩りに行こう!」と言い、母も加わって総勢6人で潮干狩りへ。
沢山の人で賑わっているはずだから、迷子になるといけない、とどこから買ってきたのか、蛍光オレンジのジャンパーを羽織っていました。
とっくに成人している私達が迷子になるかも、と言う発想は無かったので、皆、笑ってしまいました。
潮干狩りの浜へ着くと父が言うように、遠浅の浜一杯に人が。
確かにこの中で蛍光オレンジの服はよく目立ちました。
皆、ちりぢりになって夢中になってアサリを掘りました。
時折、姿勢と首が疲れて立ち上がり、辺りを見回すと必ず父の姿を捉えることが出来ました。
それぞれが夢中になって掘りすぎて、採ったアサリは一人当たりの持ち帰ることの出来る2キロを大きく超えてしまいました。
その場で超過分のアサリとお別れしました。
夢中になっても6人がはぐれなかったのは、間違いなく、父のおかげです。
後日、皆で見た写真には蛍光オレンジジャンパーの父があちこちに写っていて、よく目立っていました。
「このジャンパーのおかげで誰も迷子にならなかったね」と、この出来事はいつまでも私達の笑い話になっています。