マテ貝というものがあるらしいのだけれども

「マテ貝というものがあるらしいのだけれども」 母のその一言で、私たちはその年に初めて、マテ貝を採ることになりました。

元々潮干狩りはよくする家庭で、毎年春頃になるといつの間にか車に潮干狩りセットが積まれているような一家でしたから、それまではザリザリとミニ熊手でアサリやハマグリ、バカガイなどばかりとっていた私達には聞き覚えのない響きだったことを覚えています。

どうやってとるのかを一家で一緒になって調べた時、私と弟はその独特なとり方に早くもノリ気になって、その日のうちに大量の食塩をスーパーに買いに行きました。

そしてきたる当日。

マテ貝以外の貝もとるのに用意していたいつもの熊手とミニスコップ、潮干狩りセットの中では新入りの塩入りタッパー。

それらを抱えて、私と弟は夢中で砂を掘ってはマテ貝の穴を探しました。

そして初めて塩をふってからニョキっと出てくるマテ貝を見た時は、想像以上の気持ちの悪さに姉弟揃って悲鳴をあげて後ずさり。

それでもすぐに慣れて、次々とマテ貝を捕獲しました。

そして夜、ハマグリやアサリと共にバター焼きで出されたマテ貝。

今度は想像通りの気持ち悪さで、家族一同誰が初めに箸を伸ばすのかで大いに盛り上がり、それでは私がと箸を伸ばし、マテ貝を一口ガブリ。

あの独特な食感はなかなかに印象的で、大した感想を伝えることもなく勢いで家族全員に食べさせました。

そしてそれぞれ思い思いの反応をして夕飯は終わり。

いくつになっても、マテ貝をとる時はそのことを思い出します