親友にも打ち明けられなかった先生との秘密の恋
私が20代の学生だった時のことです。
資格試験合格に向けて授業が終わったあとロビーのテーブルで集中して勉強していました。
気がつくと施錠時間ギリギリになっており、外はすっかり暗くなっていました。
帰り支度をして外に出るとひどく吹雪いてきました。
荒れるという予報だったそうで、普段ならサークル活動で残っている学生たちもその日に限ってはもう誰もいませんでした。
天気予報をチェックしていなかったことを後悔して歩きだしましたが、視界も悪いし寒いしでだんだんと怖くなってきました。
その時、一台の車が私のすぐ横にとまりました。
助手席のドアが開かれ「こんな中を1人で歩いていたら危険です。乗りなさい」という声とともに、見慣れた数学の先生の顔が見えました。
助かったと思い私は車に飛び乗りました。
先生は丁寧な運転で私をアパートの前まで送ってくれました。
家に入って一息つくと、私は先生の運転する姿が思い出していました。
真剣な横顔、眼差し、ハンドルに伸びた腕……そのどれもが素敵に思えて切なくなりました。
翌日、私は同じ時間帯に同じ場所を歩いてみました。
すると、昨日と同じように車がとまったのです。
私は無言で車に飛び乗りました。
しばらくお互いに何も言いませんでしたが、不思議と同じ気持ちなのだろうと通じ合っている感覚がありました。
川辺の駐車場に車をとめて手をつなぎ、肩にもたれ、恋におち、卒業するまで秘密の関係が続きました。
先生は生徒との恋愛が禁止されていたので、この恋だけは親友にさえ打ち明けていません。